ネットワーク経済性とは SNS や電子メール電話などのネットワーク型のサービスにおいて他の参加者が増えれば増えるほど、個々の参加者の利便性が増す現象のことを言います。ネットワーク外部性やネットワーク効果とも呼ばれます。ユーザーを増やしてサービスの利便性を増している SNS の Facebook や無料メール通話アプリの LINE などは、ネットワーク経済性を利かせているサービスの一例です。ネットワーク経済性は、ネットワークへの参加者数そのものがネットワークの価値を生む現象ということもできます。
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ネットワーク経済性の考え方
ネットワーク型サービスにおいてサービスの参加者数が Nだとします。サービス提供者から見ると、この参加者数N にコストが比例する一方で、便益は参加者数N の二乗に比例します。参加者は、そのネットワークの便益を上げるために参加しているわけではありません。しかし、結果として、その人達が参加することでネットワークの価値は上がっていきます。参加者を増やしネットワーク経済性を利かせるには、まず優れたサービスを提供することが大事です。そして、市場にいち早く参入し、先行者利益を活かして、競合より少しでも早く多くの利用者を獲得することがサービス提供者にとって重要になります。さらにネットワーク経済性が働きネットワークの価値が高まると、そのサービスは市場のデファクトスタンダードつまり事実上の標準となり高いシェア収益を得ることができます。サービス提供者は参加者を増やし、ネットワーク経済性を利かせることでサービスの競争優位を確立することができるのです。
正のフィードバック
ネットワーク経済性が働くと、正のフィードバックと呼ばれる効果が現れます。正のフィードバックとは、参加者が増すと利便性が上がる、すると、ますます参加者が増え、ますます利便性が上がるというループのことを言います。この効果は参加者が少ないうちでも効きますが、特に「クリティカルマス」と呼ばれる商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がる臨界点を超えると、潜在的なユーザーにもその効果が見えやすくなり、劇的に効果が現れます。提供者側の視点からいうと、「クリティカルマス」を超えるとサービスの利便性が高まるので、参加者を獲得するコストは総体的に下がっていきます。
ネットワーク経済性の事例
メルカリを事例を見てみましょう。メルカリは、ご存じの通り、スマートフォンを使って洋服、雑貨、家電、本や漫画など幅広いジャンルの品物を個人売買できるフリーマーケットアプリです。2013年7月にサービスを開始し徐々にアプリのダウンロード数を増やしていました。2014年4月に初めてテレビ CM を実施し、10月に第2弾のテレビ CM を実施すると、ダウンロード数が大幅に増えていきました。ダウンロード数が増えユーザーが増えることで、一日あたりの平均出品数は2014年1月から1年間で約8倍に増えました。更に商品数が増えたことで購入希望者も増え、出品したら、すぐ売れる好循環が出来上がっていきました。今では多くのユーザーがメルカリより押し品物の売買をしています。メルカリはユーザーを増やすためにテレビ CM を実施するという施策を打つことで、早い段階で クリニカルマス を突破し、ユーザーの利便性を高めることができたと言えます。それによってそれまでネット上で定着していたオークションとは異なる新しい形のサービスにもかかわらず急速にスタンダードな地位を築くことができました。
ネットワーク経済性のまとめ
✔ネットワーク経済性とは、ネットワーク型のサービスにおいて、参加者が増えれば増えるほど、参加者の利便性が増す現象を言う。
✔ネットワークの参加者が増えれば増えるほどネットワークの価値は上がっていく。
✔競争優位やデファクトスタンダードを確立する可能性、そして高収益を得ることができる可能性が高まる。
特に、比較的安価にサービス基盤を提供しやすく、スピード勝負となりやすいネットビジネスでは、どのくらいのスピード感でビジネスを展開すべきかを検討する上で重視すべきポイントです。
ネットワーク経済性の留意点
✔魅力的なサービスであることが必要。
ある程度のレベルを超える魅力的なサービスでユーザーを増やすことが必要ということです。ネットワーク経済性の力だけで、つまり参加者数をある程度まで増やしてさえすれば、それだけでネットワークが拡大充実していくわけではありません。そもそも一定の価値があるサービスでないと、ユーザーを増やすことはできません。価値あるサービスだからこそユーザーが増え、サービスの利便性が増すという好循環が生まれます。
✔デファクトスタンダードを実現しても、より優れた代替品が出てくればその地位は脅かされる
ネットワーク経済性は、他の経済性に比べて効果が大きいため、デファクトスタンダードを実現した企業は多大な収益性と持続的な競争優位性を確立できるとされています。しかし、より優れた代替品が登場すれば、当然その地位は脅かされることになります。ネットワークが小さくても、独自性でサービスの価値を高め、存在感を持つ企業が出てくる場合もあります。