アンゾフの成長マトリクスで自社の事業拡大を検討する

アンゾフ

アンゾフ成長のマトリクスは、事業活動市場と製品の軸で既存と新規の四つに分類し、企業における成長戦略の方向性を探るフレームワークです。経営学者のイゴールアンゾフによって提唱されました。既存市場と既存製品の組み合わせが市場浸透、既存市場と新規製品は新製品開発、新規事業と既存製品は新規市場開拓、新規市場と新規製品は多角化の四つの象限に分類されます。このマトリックスを使うことで、実現可能性のある施策を網羅的に洗い出すことができます。また、現在までの事業を当てはめることで、自社の事業拡大の傾向・強み・弱みが確認できます。そのため、自社の事業拡大を検討する際に活用することができます。

コンテンツ

市場浸透と新製品開発

まずは、既存市場が舞台である市場浸透と新製品開発を見ていきます。

✔市場浸透

すでに市場に導入された製品やサービスの売り上げをさらに伸ばすという視点です。

具体的にはキャラクターでブランド力を高めて顧客数を増やす。他社からの乗り換えキャンペーン、で市場シェアを伸ばす。菓子パンを三つ買うと2割引になる。セールで販売数量を伸ばすなどです。四つの分類の中で、一番成功確率が高いのですが、継続成長が難しいのが特徴です。

✔新製品開発

既存の市場に新しい製品を導入することで成長するという視点です。最新技術を駆使した新世代製品の導入製品ラインの拡張、新しい属性の追加が挙げられます。具体的には、人工知能を搭載した自走式自動車の導入、サイクロン掃除機を製造販売するメーカーが扇風機も販売、1 L の紙パック入り牛乳に加えて低脂肪乳や、200ミリリットルの飲みきりパックの追加などです。既存製品の延長に止まれない創造性を持った研究開発や商品企画を行うことが重要です。

アンゾフ

新市場開拓と多角化

次に新規市場が舞台となる新市場開拓と多角化を見ていきます。

✔新市場開拓

新しい市場に既存の製品をどのように展開するかという視点です。異なる顧客層への展開や新しい地域での製品導入などが挙げられます。具体的にはノンカフェインティーをパッケージは大きさを変え、赤ちゃん向けにベビー用品店で販売したり、ラーメン屋がヨーロッパに店舗を構えるなどです。異なるニーズを持つ新しい顧客に既存製品を使ってもらえるかが鍵になります。また、製品を届けるための流通や販売などのチャネルが確保できるかも大きなテーマです。

✔多角化

新規市場に新製品を提供することで成長するという視点です。新規事業と呼ばれる活動の多くが、この分類に属します。具体的には、損害保険会社が介護サービスや保育サービスを行うラグジュアリーブランドのアパレル企業が、ホテル事業に進出するなどです。成功確率は最も低いです。未知の領域のため、自社で一からビジネスを立ち上げるのではなく、企業を買収して資源やノウハウを手に入れることもあります。

紳士服専門店の事例

事例として、紳士服専門店 A 社の事業を見ていきます。

現在、 A 社は男性向けのスーツ販売のみならず、様々な事業を展開しています。

✔市場浸透

顧客を増やすためにセールを行ったり顧客が飼いやすいような店舗改造したりスタイリストによる着こなし提案で逆単価を上げています。

✔新製品開発

洗えるスーツなど高機能商品を提供しています。加えてスーツ以外の医療や小物の販売や既存顧客の20代から40代を意識した新ブランド展開などがあります。

✔新市場開拓

男性にとどまらず、女性向けもターゲットにしました。また、大柄な人に特化した衣料販売も始めました。

✔多角化

スーツ販売とは全く違うブライダル事業やカラオケなどのエンターテイメント事業に参入していることです。今では、これらの事業で売上の4割程度を占めます。前者は、紳士服販売が伸び悩む中で、バランスよく事業を展開し、成功している事業戦略と言えます。一方で今後、事業を多角化しすぎると本業がおろそかになる事業間の資源共有ができず、非効率といったデメリットもあります。

アンゾフの成長マトリクスは成長戦略の方向性導き出す

アンゾフのマトリクスは、企業における事業戦略の方向性を探るためのフレームワークです。市場浸透は、既存市場と既存製品の組み合わせです。マーケットシェアの拡大や顧客の製品仕様を増やすための施策が考えられます。新製品開発は、既存市場と新規製品の組み合わせで、新世代製品の導入、製品ラインの拡張、新しい属性の追加などが挙げられます。新市場開拓は、新規事業と既存製品の組み合わせで新たな顧客層への展開や新しい地域での製品導入などが挙げられます。多角化は、新規市場と新規製品の組み合わせで、未知の市場での新事業となります。過去の事業の特徴や、網羅的に洗い出された施策案から成長戦略の方向性を導き出しましょう。

留意点

✔事業のアイデアは制約や優先順位にとらわれず、たくさん洗い出す。

競合が思いつかない秘策を思いつく可能性が高まる。

✔新しい事業を検討する際は、既存事業とのシナジー相乗効果を意識する。

シナジーとは既存の資源の有効活用や関連するビジネスを行うことで、企業が得られる様々なメリットを指します。

✔成長戦略の意思決定をする際は、様々な角度から分析する。

アンゾフの成長マトリックスに加え、バリューチェーンやプロダクトポートフォリオマネジメントといった異なる切り口の事業分析ツールも使いながら、総合的に判断していくことが必要です。